WithYouの特徴は医療者が中心となって、企画運営されていること。
WithYou小江戸開催に向けて奔走している医療者にぐぐっと迫っていきます!
(取材:患者ボランティアチーム)
WithYou小江戸の顔
WithYou小江戸の顔
第1回矢形寛先生
With You 小江戸の開催に向け
奔走されている多くの方々の中から、第1回は、
埼玉医科大学総合医療センターブレストケア科の
矢形寛先生にお話を伺います。(2016年取材)
矢形 寛先生
埼玉医科大学総合医療センター
ブレストケア科教授
いよいよ第1回With You 小江戸が実現しますね!
今日は普段わたしたちが知っている乳腺外科医としての矢形先生についてだけでなく、
少し突っ込んだプライベートな面、そしてWith You 小江戸への意気込みまで、
いろいろとお話を聞かせてください。
――まず、先生が乳腺外科医を目指したきっかけを教えてください。
矢形先生:今までたくさんのタイミングがありました。
がんの医療に関わりたい、外科をやりたいという気持ちがもともとありましたが、
学生時代に外科病棟で接した患者さんが乳癌の方であったり、
最初の学会発表のテーマが乳癌だったり、私が懇意にさせていただいた先輩が
乳腺外科の道に進んだり…など、いろいろなことが私の進むべき道を作ってきたと思います。
――そうなんですね。先生を乳腺外科医へと導いてくれた様々な出来事に
感謝している患者は多いと思います。
診察にあたり、先生が心がけていることはありますか?
矢形先生:できるだけ笑顔で患者さんと接していきたいと思っています。
『笑顔は万病の薬』だと信じています。
笑顔はそれに接する人を幸せにする力を持っています。
――主治医が笑顔で迎えてくれると、それだけで患者は安心できるような気がします。
つぎに、ちょっと壮大な質問になりますが、矢形先生の考える
『ブレストケアの未来予想図』はどんなものですか?
矢形先生:私が立ち上げたブレストケア科は、単に診断や治療のみならず、
ケアをより大切にしたいという思いから、このようなネーミングにしました。
というのも、ケアができて初めて、患者さんも診断や治療に心置きなく
取り組んでいけるものだと思うからです。
現在、国内外で患者ケアの様々な取り組みが始まっています。
私がまず行っていきたいのは、国内で行われている優れた多くの患者ケア活動を、
ブレストケア科に導入することです。1から作り上げることも大切ですが、
優れたものを取り入れ、その中から当科に適したアレンジや工夫を
その後に行っていきたいと考えています。そして、10年後には
『患者ケア』の最先端を担っていけるようにしたいというのが私の夢です。
――では、ここからは少し先生のプライベートな面に迫ってみたいと思います。
いつもご多忙でいらっしゃる先生ですが、
息抜きや趣味で何かなさっていることはありますか?
矢形先生:走ることが好きなんですが、最近は職場までが遠くなったことと
多忙であることから、あまり走れていませんね。あくまで言い訳ですが。
――なかなか息抜きする時間もとれないのですね。
患者に運動を勧める先生は多いですが、ランナーでもある先生から
言われるのなら説得力があります。これからも是非、走り続けてください!
好きな食べ物を教えていただけますか?
矢形先生:やっぱり川越に来たからには『うなぎ』ですね。
――先生の活力の源は『うなぎ』だったんですね!
好きな映画はありますか?
矢形先生:「永遠の0」。不覚にも涙が止まりませんでした。
――それは是非観てみなくては。
では、感銘を受けた本はありますか?
矢形先生:「わたしはマララ」(学研パブリッシング/2013年)でしょうか。
「1人の子ども、1人の教師、1冊の本、1本のペンでも世界を変えられる」という
スピーチが有名ですが、幼少時からの人生を綴ったこの本は、
妻が子供に読ませるために購入したものですが、
私が真っ先に読んで感動してしまいました。
――では本題の、今回のイベントに関して伺いたいと思います。
なぜ川越でWith Youを開催しようと思ったのですか?
矢形先生:もちろん私がここ川越の地に来たからです。
With youは国内で広がっている優れた患者ケア活動の1つであり、
私も初期の頃からWith You Tokyoに関わってきたことから、
是非ブレストケア科が大きく関わるべきものの1つとして川越で開催したかったのです。
――川越でのWith Youを“With You 小江戸”と名づけた先生のセンス、素敵です!
では、With You 小江戸にかける意気込みをズバリ一言でお願いします。
矢形先生:意気込みといいますか、私の思いに賛同していただける
たくさんのボランティアの方が集まっていただいたおかげで、
私が思う以上によい会になるのではないかと楽しみにしております。
――わたしたちも精一杯頑張らせていただきます!
では最後に、患者さんに伝えたいメッセージをお願いします!
矢形先生:何があっても『明るく、楽しく、元気よく』です。
簡単なことではないかもしれませんが、皆さんに目指して欲しいことなのです。
――先生、今日はお忙しいところありがとうございました。(患者ボランティアチーム・M)
佐野元彦先生
埼玉医科大学総合医療センター
薬剤部 がん専門薬剤師
WithYou小江戸の顔
第2回佐野元彦先生
「WithYou 小江戸の顔」第2回は
実行委員として10/2に向けて
走り続けてくださっているおひとり、
埼玉医科大学総合療センター 薬剤部
がん専門薬剤師の佐野元彦先生にお話を伺います。
(2016年取材)
佐野先生 、よろしくお願います!
――まずは、佐野先生が薬剤師の道を選んだきっかけを教えていただけますか?
4歳の時に、お薬の影響で再生不良性貧血という難病になりました。
いわゆる薬害ですね。そうした自分の病気と長く向き合う中で、
自然と薬に興味を持ち薬剤師になりました。
――お話をうかがい、とても驚きました。
今日の 佐野先生ご活躍の根本には、ご自身の体験があったのですね。
佐野先生は「がん専門薬剤師」という資格をお持ちですね。
私たち患者には聞きなれい言葉ですが、更に専門性の高い道をお選びになったことも、
ご自身の体験に由来するのですか?
現在、全国に 482 名の がん専門薬剤師がいます。
がん専門薬剤師は日進月歩で変化するがん医療の中で、高度な知識・技術と臨床経験を備え、
常に最適ながん薬物療法を提供することを目指しております。
そのために、安全で質の高い医療の提供、臨床研究の企画推進、
後進の育成などに力を注いでおります。
2002年に4歳から患っていた再生不良貧血が急性転化して、急性骨髄性白血病になりました。
それまで造血器腫瘍について独学で勉強していた机上の知識に加え、
余命告知、抗がん剤投与や骨髄移植などを経て、がんサバイバーとなりました。
こうした患者経験や薬剤師の専門性を生かし、少しでもがん患者さんのために
貢献できればと思い、がん専門薬剤師になりました。
――WithYou小江戸の企画準備から常にアクティブに先頭を走ってくださっている佐野先生が、
まさかがんサバイバーとしての体験を経て今日に至っていたとは、想像もしていませんでした。
貴重なお話をありがとうございます。
医療従事者であり、がんサバイバーとしての体験もお持ちの佐野先生。
佐野先生が患者さんに接する際に心がけていることはありますか?
健康な人が一喜一憂するところ、患者さんは一喜二憂、三憂と
どうしても「憂い」が多くなります。私が患者の立場にいたときもそうでした。
しかし、医療従事者の励ましの言葉や笑顔に、とても勇気づけられました。
そのような経験から、患者さんのわずかな「一喜」に気づき、
「よかったですね」と声をかけられる薬剤師になろうと思っています。
そして、いつも笑顔で一生懸命頑張れる薬剤師になれればと思っています。
――第一回の矢形先生のお話にも「笑顔は万病の薬」とありましたね。
医療従事者のみなさんがそんな心持ちでいつも私たちを迎えてくださっているなんて、
ここでもまた大きな驚きと感謝の気持ちでいっぱいです!
では、ここからは、少しだけ佐野先生のプライベートに迫らせてください。
・佐野先生の一日(職場編)
普段は、外来化学療法室というところに常駐しております。
抗がん剤の混合調製や、服薬指導などをしております。
多くのがん患者さんが訪れる中、ご自宅で安心した生活が出来るようにサポートしております。
・佐野先生の一日(休日編)
最近はなかなか休みが取れないのですが、家族でキャンプに行きますね。
バーベキューして温泉に入って自然の中でとてもリラックスします。
また、数年前までスキーやスキューバーダイビングもやっていたんですよ。
なんか久しぶりに行きたくなっちゃいました。
――本務でご多忙の中、さらにWithYou 小江戸の準備も加わり、熱い季節をお過ごしの佐野先生。
WithYou 小江戸閉幕後は是非息抜きにお出かけくださいませ!
本題のWithYou 小江戸についてお伺いします。
WithYou 小江戸にかける意気込みを一言でお願いします!
初めての参加なのでドキドキしていますが、まずは自分の役割をしっかりこなして
患者さん達とともに楽しみたいですね。
――いつでも、どこでも、どんなに小さくても、みんなが持っているはずの「自分の役割」。
日常では見失いがちですよね。改めて言葉にしていただくと、ふと、意識が向かいます。
是非、みんなで充実した時間を過ごしましょう!
「With You 小江戸」の開催地である川越。川越といえば!
佐野先生おすすめスポットを教えてください。
私は美味しいものを食べるのが大好きなんです。川越には個人経営の飲食店が多いです。
そのため、お店ごとに雰囲気が異なり、素敵なお店が多いんですよ。
自分の趣味やその日の気分に合うお店に出会ったら、まずは勇気を出して入ってみて下さい。
きっとすてきな世界が広がります。
秋空の川越の素敵な街並みに是非足を運んでほしいですね!
――最後になりますが、佐野先生から患者さんへ一言メッセージをお願いします!
「『患』者さん」の『心』に刺さった『串』を取り除くのが、
私たち医療者の役割だと思っています。何かお困りのことがあればいつでもご相談下さい。
佐野先生、本務と準備とでお忙しい中ありがとうございました!
佐野先生には「第1回withyou 小江戸(2016年開催)」の当日13:35 から
「乳がん患者さんに薬剤師ができること」という演題でお話いただくことになっています。
皆様どうぞ楽しみにご来場くださいませ。 (患者ボランティアチーム・O)
WithYou小江戸の顔
第3回布谷玲子さん
「WithYou小江戸の顔」2017年の第1弾は、
昨年から引き続き、実行部隊の中心人物としてご活躍中の埼玉医科大総合医療センターブレストケア科
看護師、布谷玲子さんにお伺いします。
(2017年取材)
埼玉医科大学総合医療センター
ブレストケア科看護師
布谷 玲子さん
布谷さん、よろしくお願いします!
――昨年の第1回WithYou小江戸では、常に全力で奔走していらした布谷さんの後ろ姿が、
私たち患者ボランティアにはとても印象的でした。ありがとうございました。
昨年の第1回を振り返ってご感想をお願いします!
初めてだったので、わけがわからず大変でしたが、多くの方に集まって頂けたこと、
地域の他施設の方々と協力し合いイベントを行えたことが大きな収穫でした。
「With Youを川越でやる!」と決めて動き出し、実現した矢形先生はすごい!
患者ボランティアさん、参加された患者さん方のパワーも感じました。
ーー布谷さんは「乳がん看護認定看護師」の資格をお持ちですね?
はい。
がん患者さんに対する専門的な知識を持ってお手伝いができたらいいなと考えていた時に、
乳がんの認定分野が出来たので、そちらの道を選びました。
ーー乳がんに特化した看護知識をお持ちということですね。心強いです。
私たち患者が乳がん認定看護師さんに会いたい、お話を聞きたい、聞いて欲しいと思った場合は、
どのような手段がありますか?
看護専門外来を予約制で行っています。
お気軽に、当院(埼玉医科大学総合医療センター)の外来化学療法センターへ
お問い合わせくださいね。
ーー布谷さんが患者さんに接する際に心がけていることはありますか?
まずは、お話を聞くことを大切にしています。
アドバイスなんかしなくても、話していく中で患者さんご自身が答えを見つけたたり、
決めていくケースがたくさんあります。
ーーああ、わかる気がします。
布谷さんの、そっと肩を貸してくれる距離感は、私にとって心地よいものです。
「布谷看護師の一日」を教えていただけますか?
外来化学療法センターで勤務しています。
患者さんの副作用状況の確認、点滴の針を刺す、点滴中の状態観察などです。
ブレストケア科の依頼で患者さんと面談したり、化学療法が始まる方への説明なども行っています。
がん患者さん・ご家族の会、ヨガ教室、親と子のがん教室「くれよんの会」なども開催しています。
ーー先日参加させていただいたヨガ教室も、とてもゆったりした空気でした。
まさに私たち患者に寄り添ってくれているのだなと実感しました。
そんな、ご多忙な布谷さんの息抜き&趣味を聞いてもいいですか?
話せる仲間たちとお酒を飲むこと。
帰宅後に愛猫と会話をするのが癒しです!
ーー猫ちゃんの癒しパワーが、巡り巡って私たち患者を支えてくれる土台に
なっているのですね(笑)!猫ちゃんありがとう!
では本題となります、2年目を迎える今年のWithYou小江戸にかける意気込みを教えてください!
今年は、アピアランスケア(外見のケアとその支援)や、支援医療がテーマなので、
乳がん患者さん以外でも興味のある方々にご参加頂ければ嬉しいです。
ーー布谷さんおススメの川越スポット、時の鐘や蔵づくりの街並みを
秋の風を感じて散歩をしながらお立ち寄りいただくのも、気分転換になるかもしれませんね。
最後に患者さんへメッセージをお願いします。
今年は無料での開催が実現しました。乳がん患者さん以外の方もお気軽にご参加ください。
今年は新たなメンバーが大増員しての開催ですね。
わたしたち患者ボランティアスタッフも、微力ではありますが、
心を込めてお手伝いしたいと思っています。
布谷さん、ありがとうございました! (患者ボランティアチーム・O)
WithYou小江戸の顔
第4回小西寿一郎先生
「With You小江戸の顔」2017年の第2弾は、
昨年のWith You小江戸でダンディなモデルウォークを
披露してくださった国立病院機構埼玉病院乳腺センターの小西寿一郎先生にお話を伺います。
(2017年取材)
小西寿一郎
先生
国立病院機構埼玉病院乳腺センター
センター長
――小西先生、本日はお忙しいところお時間をいただきありがとうございます。
まず、先生が乳腺外科医を目指したきっかけを教えていただけますか。
小西先生:まだ私が若かりし頃に…
――先生、今も十分お若いと思うのですが…
小西先生: そうでした(笑)。もっと若かった頃に、かなり厳しい状態の転移再発乳癌の若年女性を治療することがあり、その時に化学療法で劇的に病状が改善していく経過を目の当たりにし、強い衝撃を受けたので乳腺外科を目指すようになりました。
実際に乳腺外科医になり、患者さんを診断から手術を含めた治療まで一貫して診れることにやりがいを感じています。
――先生が診察で特に心がけていらっしゃることはありますか。
小西先生:一人ひとりの患者さんに対して、できるだけ丁寧な診療、且つ患者さんに寄り添った診療を心がけています。診察室に入ってから診察を終えて出て行くときの表情の変化を見て、自分の行った診療の質を自分なりに評価しています。
――患者さんの表情にまで目を配ってくださっていらっしゃると聞くと、とても心強いです。手術についてはいかがですか。
小西先生:根治性を維持しながら温泉に行っても誰も手術したことが分からないほどの整容性を如何に維持できるかをいつも心がけています。
患者さんが「私、乳癌だということを忘れていました。」といっていただけることが私の使命だと思っています。
――病気のことを忘れる時間が少しずつ増えて日常に戻っていく、そういうサポートをしてくださっているのだなと感じます。
さて、前回のWith you小江戸にご参加いただいた感想はいかがでしょう。
小西先生:患者さん、医師、看護師、また乳癌に関わる人たちとのグループワークにおいて、患者さんの病気に対する不安やそれに立ち向かう気迫を感じました。また、会が終わるととても満足されて帰っていく患者さんの表情を見て、まさに患者さんのケアを大切にするこの会の必要性を実感しました。
――先生の診察モットーにも通じるコンセプトの会ということですね!
では、先生のWith you小江戸にかける意気込みをお聞かせください。
小西先生:With you小江戸が今後も定期的に開催され、盛会になるように自分なりに少しでもサポートできればと思います。
――力強いお言葉、ありがとうございます。そんな、いつもパワフルな小西先生が息抜きになさっていることを是非お聞きしてみたいです。
小西先生:息抜きは、体を動かすことですね。学生時代に空手をしていたこともあり、週に1日は息子と一緒に空手の稽古に通って汗を流しています。空手というと以前は危険人物的なイメージがあったため、周りの人には隠していましたが(笑)、オリンピックの正式種目に加わったことでクリーンなイメージになってきたので、最近やっと空手をしていると言えるようになりました。
――危険人物だなんてそんな…(笑) 空手道に精進されている方というと、礼儀を重んじるイメージがあります。お写真の空手着姿の先生もとても爽やかで素敵ですね!
では最後に、小西先生から患者さんへのメッセージをお願いします!
小西先生:私は、「人生はプラスマイナスゼロ」だと思っています。悪いことがあれば必ず良いことがあります。悪いときがあっても必ず良いときがきます。それを信じて一日一日を前向きに楽しみましょう。
――小西先生、素敵なメッセージをありがとうございました。With You小江戸の当日もよろしくお願いいたします!(患者ボランティアチーム・M)
WithYou小江戸の顔
第5回儀賀理暁先生
「WithYou小江戸の顔」2018年は、
昨年のWith You小江戸でとても素敵な歌声を聞かせてくださった儀賀理暁先生にお話を伺います。儀賀先生は埼玉医科大学総合医療センター緩和医療科/呼吸器外科のドクターでいらっしゃると同時に、フェリス女学院大学音楽学部で非常勤講師もなさっているマルチな才能をおもちの先生です!
(2018年取材)
儀賀理暁
先生
埼玉医科大学総合医療センター
緩和医療科/呼吸器外科
――先生、今日はよろしくお願いします! 早速ですが、先生は特に緩和ケアをご専門にされていらっしゃいますが、お医者様になられた当初からそのような道を目指されていたのですか?
儀賀先生:私が医師免許を拝受した頃は、ターミナルケアと言うのが精一杯で、まだ緩和ケアという言葉さえありませんでした。大学に入学した時から目指していた外科医への道を歩み始めましたが、がんであってもなくても、目の前にいる患者さんやそのご家族が病そのものはもちろん、それにまつわる様々な問題に苦しみ、そしてその苦しみからの解放を望んでいることに対してほぼ何も応えられない自分の無力さを思い知らされる日々が続きました。そして、当時それに応えてくれるものはゼロに等しい状況でした。インターネットもない、教科書もない、指導者もいない、(今から思えば)使える薬もほとんどない、そういう時代でした。
とは言え現場は待ったなしですから、なりふり構わず、病気そのものだけではなく一人ひとりの物語にも対応しようと努めてきました。年月を経てふと顔を上げてみると、いつの間にか世の中に「緩和ケア」という言葉や考え方が少しずつ広まっていた、そんな感じです。今ここに、ほら貴方の傍らに当たり前に存在していますよって、そういう風に「緩和ケア」をお届けできたら嬉しいです。
――今でこそ、NBM( Narrative-based Medicine)といったことが広く言われるようになっていますが、儀賀先生は、それをご自身の経験の中から編み出されてきていらしたのですね!
儀賀先生: がん――それ以外の疾患も同じだと思いますが――の治療には、「病気」に焦点をあてる対応と「あなた」に焦点をあてる対応の両方が必要です。
「病気」治療することと、丸ごと「その人」に対応することがいわば車の両輪になるということでしょうか。
儀賀先生:残念ながら、通常の「医療」の枠組みでは後者が少々なおざりになっていると言わざるを得ません。本来は、どちらも同じ様に大切にされるべきだと思っています。
――先生から患者さんに伝えたいメッセージをお願いします。
儀賀先生:医療という限られた舞台の上で語られる言葉は私たち医療者の得意分野ですが、今ここをいかに生きるか何を大切にしたいかという答えは医療者ではなく患者さん(とご家族)の中にあり、医療の言葉ではなく本人の言葉こそが相応しいはずです。
私の講座を受講している音楽学部の2年生が、講義の後にこんなメッセージを届けてくれました。
「病気になった私、それでも私は私なんだと言い切れること。そうしたことで開けた新しい道はどの道よりも大きく輝き、自分らしさが最大限に発揮できるのだと強く思いました。」
世界のどこかに転がっている「正解」を探しにゆくのではなく、貴方の中にある答えを一緒に言葉にしてゆく事が、正解の無い問いへの「応え」だと思っています。
――先生が授業を通じて伝えていらっしゃる「心」が学生さんに届いたのかもしれないですね! 今年のWithYou小江戸での歌にかけるお気持ち、お心意気をお願いします!
儀賀先生:私は、音楽(療法)を通してこんな事を感じています。
「僕たちが緩和ケアの中で音楽に期待しているものは、音楽の処方箋によって何かが治癒したり改善したりすることではなく、その唇の上に、その心の中にもともとある音楽を呼び覚ますこと、つまり己の中にある答えに自らの力で到達することの支えだったんだ」
広い会場の中、私一人では心許ないので、とっても素敵な声の持ち主の女性(小児科医)に歌の応援をお願いしました。皆さまの歌声が虹の彼方まで届く様にと祈りながら、弦を奏でてみたいと思います。今年も貴重な機会へとお声がけ下さって有難うございます。
――それでは最後になりますが、先生がお心に秘めている「夢」をぜひお聴きしたいです。
儀賀先生:音楽や散歩が好きと言ってもなかなか思う様に楽しめないのが現実なので、いっそのこと非現実的な(ふざけた)夢を少々。
その1:松下奈緒さんのピアノで絢香さんとデュエットしたい
その2:西本智実さんの指揮するオケとピアノ協奏曲を演奏したい
その3:ブラマサトシという番組で色々な人と散歩したい
その4:ルパン三世、次元、五右ェ門と一緒に“500”で世界を飛び回りたい
その5:今夜はカレーを食べたい
お後が宜しいようで・・・(笑)。
――素敵な夢をお聴かせいただきありがとうございました。「その5」の夢はきっと叶いそうな予感がいたします!(笑)
儀賀先生、本日はお忙しいところインタビューにお付き合いくださりありがとうございました! WithYou小江戸♪みんなで歌おう♪のプログラムを楽しみにしています!
(患者ボランティアチーム・M)